COLUMN

成果を出すために私たちが「言われたまま作らない」理由

1.はじめに

Webサイトを作りたいというご相談をいただくとき、お客様の頭の中にはすでに「こんなサイトにしたい」という明確なイメージがあることもあれば、「なんとなく古くなったからリニューアルしたい」という漠然としたお悩みをお持ちの場合もあります。

日々多くのお客様と向き合う中で、痛感していることが一つあります。それは、「言われた通りのものをそのまま作ることが、必ずしも正解ではない」ということです。もちろん、ご要望を無視するということではありません。しかし、お客様の言葉の奥にある「本当の目的」を見落としたまま制作を進めてしまえば、どんなに綺麗なデザインができあがっても、ビジネスの結果にはつながらないからです。

商藝舎では、「制作はあくまでも手段」だと考えています。私たちのゴールは、Webサイトを納品することではなく、その先にあるクライアントの課題を解決し、ビジネスの成果を出すことです。そのために、私たちは制作前のヒアリングや業界調査に多くの時間を割き、戦略を立てるフェーズを何よりも大切にしています。

2.「制作」の前にある「戦略」こそがプロジェクトの命運を分ける

Web制作のプロジェクトというと、すぐにデザインやコーディングの話になりがちですが、実はそのずっと手前の段階で、勝負の8割は決まっていると言っても過言ではありません。
なぜなら、Webサイトはビジネスの課題を解決するためのツールの一つに過ぎないからです。「お問い合わせを増やしたい」「採用のミスマッチを減らしたい」「ブランドの認知度を高めたい」。そうした目的を達成するために、誰に、何を、どのように伝えるべきか。この設計図が間違っていれば、どんなに優れた技術で実装しても、期待した効果は得られません。

だからこそ、私たちは制作前のヒアリングを徹底します。 お客様が認識している課題は、実は氷山の一角であることも少なくありません。たとえば「サイトのデザインが古いから若手が入社してくれない」というご相談があったとしても、深く分析してみると、実はデザインの問題ではなく、求職者が求めている情報(キャリアパスや働き方)がサイト内に不足していることが本質的な原因である場合もあります。

このように、クライアントのビジネスモデル、競合他社の状況、そしてターゲットとなるユーザーの心理を深く理解し、具体的な課題点を明らかにすること。そして、その課題を解決するための戦略を緻密に立てること。この「準備」のフェーズを丁寧に行うことが、結果を出すための最短ルートなのです。

3.お客様の言葉を「翻訳」し、修正の奥にある真意を探る

プロジェクトが進み、デザインの確認を行っていただくフェーズでのことです。あるお客様から、具体的な修正のご要望をいただいたことがありました。
「この要素をもっと目立たせるために大きくしてほしい」といった、かなり具体的な指示を含む内容でした。

私としては、お客様のご要望通りに修正して、早くOKをいただきたいという気持ちが正直ありました。言われた通りに直すのが一番早いですし、それが「対応力」だと思っていたからです。しかし、その指示通りに修正すると、全体のバランスが崩れてしまう懸念がありました。
そこで私は、修正作業に入る前に一度手を止め、以下のステップで思考を整理することにしました。

1.言葉を鵜呑みにしない

「配置を変えたい」という言葉そのものではなく、なぜそう思ったのかを考える。

2.真の意図(インサイト)を探る

お客様は、実は「本当に伝えたい重要なメッセージが、ユーザーに見落とされてしまうのではないか」という不安を持たれているのではないか?

3.デザイナーへ相談

「言われた通りの修正だとデザインが崩れるが、お客様の『見てほしい』という目的を、別の方法で達成できないか」を相談する。


デザイナーと議論を重ねる中で、いくつかの解決策が見えてきました。私たちは、単に言われた通りの修正案を持っていくのではなく、複数の選択肢を用意してご提案することにしました。

・A案(ご要望通りの修正案)

いただいた指示を忠実に反映したもの。

・B案(私たちが推奨する解決案)

「情報の目立ちにくさ」を解消するために、大きさではなく、色や配置を調整して視線を誘導する案。

ご提案の際には、「お客様が懸念されている『情報が伝わらないリスク』を回避するためには、実は色を変えるよりも、こちらの案の方がユーザーの視線を集める効果が高いです」と、丁寧にご説明しました。

するとお客様は、「そういう意図であれば確かにこちらのほうが良いですね。」と、私たちが推奨したB案を採用してくださいました。
この経験から、ご要望をただの「作業指示」として受け取るのではなく、その裏にある課題を見つけ出し、プロとしての解決策を返すことこそが、本当の意味での「顧客満足」につながるのだと学びました。

4.チームで最適解を導き出すということ

先ほどの事例でも触れましたが、Webディレクターは一人で仕事をしているわけではありません。
私はまだ未熟なディレクターですが、だからこそ、自分一人で抱え込まず、専門知識を持つメンバーに積極的に相談することを心がけています。お客様からいただいた課題を持ち帰り、「どうすればこれが解決できるか」をチーム全員でブレインストーミングする。そうすることで、私一人の頭では思いつかなかったような、画期的な解決策が生まれることが多々あります。

お客様に対しても同様です。私たちを「発注先」と見るのではなく、「プロジェクトチームの一員」として見ていただけるような関係性を築きたいと考えています。クライアントとターゲットを深く理解するためには、お客様との対話が欠かせません。表面的なやり取りだけでなく、時にはビジネスの深い部分まで踏み込んでお話を伺うこともあります。そうしたコミュニケーションの積み重ねが、結果として精度の高いアウトプットにつながると信じているからです。

5.公開はゴールではない。運用こそがビジネスの結果を生む

Webサイトは、公開して終わりではありません。むしろ、公開したその日からが本当のスタートです。 どんなに完璧に計画した戦略も、実際の市場に出してみなければ分からないことはたくさんあります。予想もしなかったページがよく見られていたり、逆に自信を持っていたコンテンツが全く読まれていなかったり。ユーザーの動きは常に予想を超えてきます。

商藝舎では、サイト公開後の運用サポートにも力を入れています。 Google アナリティクスなどの解析ツールを使って数値を分析し、「当初の仮説とどう違ったのか」「どこに改善の余地があるのか」を検証します。そして、そのデータに基づいて、具体的な改善案をご提案します。
継続してサポートさせていただくことで、私たちはお客様のビジネスの変化にも敏感になれます。「新商品が出るから特設ページを作りたい」「採用ターゲットを少し変えたい」といったご要望にも、これまでの経緯やサイトの構造を熟知しているからこそ、スピーディーかつ的確に対応することができます。

6.クライアントの「パートナー」になるために

私が目指しているのは、単なるWeb制作の担当者ではなく、クライアントのビジネスを成功に導く「パートナー」になることです。
日々のコミュニケーションにおいても、「待ち」の姿勢ではなく、「提案」の姿勢を大切にしています。お客様から言われたこと以外にも、「このページの情報を更新したほうがいいかもしれません」と、こちらからボールを投げること。

それが、お客様のビジネスを自分事として捉えているという意思表示になります。
もちろん、最初からすべてが上手くいくわけではありません。提案が通らないこともあれば、思ったような結果が出ないこともあります。それでも、諦めずに考えることで、その熱量が伝わり、「この人になら任せられる」という信頼につながっていくのだと思います。

7.成果が出た時の喜びを共有できる幸せ

Webディレクターをしていて一番嬉しい瞬間は、やはりお客様から「成果が出たよ」という報告をいただいた時です。
「お問い合わせの件数が増えました!」  「リニューアルしてから、お客様にサイトを褒められました!」
そうした生の声を聞くと、それまでの苦労がすべて吹き飛びます。画面の向こう側にいるユーザーに私たちの想いが届き、それがお客様のビジネスの成長につながったという事実は、何物にも代えがたいやりがいです。

私たちの仕事は、数字やコードを扱うものではありますが、最終的には「人」と「人」をつなぐ仕事です。クライアントの情熱を、ユーザーに届く形に変換し、双方にとって良い出会いを創出する。その架け橋になれることが、Webディレクターという職種の最大の魅力だと感じています。

8.おわりに——課題解決のために、私たちは走り続けます

Web制作は、決して安くはない投資です。だからこそ、私たちはその投資に見合う、あるいはそれ以上のリターンをお客様にお返ししたいと本気で考えています。
「かっこいいサイトを作りたい」というご要望の奥には、必ず「ビジネスを良くしたい」という願いがあります。私たちは、その願いを実現するために、サイクルを回し続けます。

1.徹底的なヒアリングと調査(制作前)

2.本質的な課題解決のための戦略立案(設計)

3.意図を汲み取った制作と実装(制作)

4.データに基づいた改善と伴走(運用)

もし今、Webサイトのことでお悩みがあれば、ぜひ一度ご相談ください。 「何から手をつけていいか分からない」という状態でも構いません。まずはじっくりとお話を聞かせていただき、御社のビジネスにおける真の課題は何か、それを解決するためにWebで何ができるのかを、一緒に考えさせてください。

私たちは、御社のビジネスを理解し、課題を共有し、共に成長していくパートナーとして、最適なご提案をさせていただきます。皆様のビジネスの発展に貢献できる日を、心より楽しみにしています。

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