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数字を知るデザイナー、デザインしかしないデザイナー

ほとんどの場合、組織に属しているデザイナーは「数字意識を持て」と言われて困ると思います。
それは「デザインをすること」が仕事だと思っているから。
世の中のため、お客様のため、ユーザのために素晴らしいクリエイティブを生み出すことが、デザイナーの存在意義。数字を追うのは、営業や経営者の仕事でしょ?と思っています。良いモノをつくることが一番の会社への貢献だと信じています。

実は、私も”数字意識を持たないデザイナー”でした。

そんな私が、数字意識を持つことが大事なのかに気づいた経緯をまとめました。

「デザイナーとしてかっこいいものを創ること」が正義だった

私が学生の頃からデザイン事務所に入って2年ほど働いていた間、一番興味のないことは数字でした。

逆に興味のあることは、デザインとクリエイティブな発想を活かした仕事。
恥ずかしい話ですが…社会人になったばかりで実務経験がないのに”自分はデザインができる”と謎の自信を持っていたため、本当に傲慢で扱いづらいデザイナーでした。
幸い、入社した会社にはデザインに集中できる環境がありました。代表が取ってきた仕事をディレクターがまとめ、デザイナーに渡されます。その仕事はいくらで受けたのか、コストはどれくらいかかっているのか、プロジェクトの全体像などまるで把握する必要もない。ただひたすらに、朝から夜までデザインをし、上司に見てもらう。その反応で一喜一憂し、なかなかうまくデザインできなかったときはデザイン書を読み漁り、ひたすらパソコンに向かっている生活でした。

当然、私の頭の中には「デザイン」ということしか頭にありません。当時「物事を解決するのはデザイナーだ」みたいな風潮があり(自分の周りだけだったのかもしれませんが笑)、私も、デザインを磨くことが世のため人のためで、デザイナーがリーダーになるんだ、と思っていました。

残念ながら、その会社にいる間には数字に関わることがないまま退職することになります。自分がやっている仕事がいくらの価値があるのかを知らずに過ごしていたのはある意味幸せだったのかもしれません。

QCDの考え方を理解し、バランスを取る

数字の話の前にQCDという、生産管理において重要な考え方についてお話します。

Q…Quality:品質
C…Cost:コスト
D…Delivery:納期

品質は高ければ高いほど良い、コストは低く抑えられるほど良い、納期は早ければ良い。そしてプロジェクトによってどれを重視するのかが異なり、どれもバランスを取らなければいけません。ただ、どれかを究極に高めようとすると、他の2つに影響を及ぼします。

例えば、納期優先かつ低予算のLPサイト制作プロジェクトがあったとします。顧客からは3週間で公開までしたいと言われています。まずはディレクターがスケジュールを組み、企画構成・原稿準備・デザイン・コーディング・確認期間に切り分け、各領域にどれだけ時間をかけられるのかを検討します。当然、どれも時間はかけられません。スケジュールを切ったのに、ここでQCDを知らないデザイナーが途中で「やはり品質を担保するのにデザイン期間は2週間ないとできない」と言い出すと、もうこのプロジェクトの結末は見えますよね。品質を優先するがために、デザイナーコストが跳ね上がり、制作期間も長期化、コーディングする時間がなくなり、公開が遅くなる…。
QCDのバランスをとり、その中で高い精度にすることが制作に求められる大事な要素です。

数字を知り、行動に変える

話を戻します。
デザインの仕事は、目に見えて結果が残ります。時間をかけてつくればその分、緻密でクオリティの高いものができました。そんな中、デザイン事務所で2年ほど働いた時、吉本さん(現在は商藝舎の社長)に声をかけてもらい、十勝の地に移り住むことになります。24歳で、吉本さんの会社に受託事業のチーフデザイナーとして入社。デザインしかやってこなかった私にとっては、ここで初めて数字を知っていくことになります。

見積もりの出し方も最初はわかりません。A4チラシ片面のデザインをいくらで出せばいいのかもわかりません。WEBサイト制作の仕事も増え始め、デザインだけではなくコーディングや企画構成の見積もりもしなければいけなくなりました。吉本さんにはかなりフィードバックをもらい、何度も見積もりを作った思い出があります。
いくらで受注するのか、外注コストをどれくらいに抑えるのか、納期はいつで、どのタイミングで請求できるのかを把握する。これだけでも数字意識のないデザイナーにとってはそれなりにハードルが高かったのです。

だけど、こういった数字を把握することで、先ほど述べたQCDに向き合って仕事をすることができました。この金額で受けているから、この工数で終わらせなければ人時生産性が合わない。この予算では高い品質を提供できない、このスケジュールでは予算が合わないので特急料金をもらわなければいけない。QCDに向き合うことで、仕事の重きをどこに設定するのか自然とわかるようになりました。

売上目標未達の責任の所在は?

そうやって仕事をしていることで、自分は組織に貢献していると思っていました。デザインだけではなくディレクションも勉強し、顧客コミュニケーションを直接とるようになり、様々な案件を回すことができるようになりました。
何ヶ月か仕事をしていくうちに、ある問題に直面します。

売上の波が激しく、ある月に売上目標の1/3になってしまったこと。

みんな毎晩遅くまで仕事をしているのに、デザインやコーディングの品質も高く保てているのに。みんなQCDを理解して仕事をしていたのに、なんで売上がいかないのか。

それは、

売上目標に責任を持っている人が社長だけだった。

です。

毎月の売上目標は設定していましたし、全員にすべての数字は共有されています。
でも売上がいかない時に理由に何かとつけていたと思います。
「実績が少ないから、どうやっても新規顧客獲得が難しい」と思う営業。
「営業が大きい案件を取ってこないからだ」と思うクリエイター。
目標未達を人のせいにしようとすれば、いくらでもできます。
当時、そんな空気があったのではないでしょうか。

数字意識を持つために、会社で取り入れた『マイクロ経営』

今から1年前、全員が数字意識を持って仕事に取り組むように「マイクロ経営」という制度をつくりました。簡単に言うと、メンバー全員が当事者意識を持った経営者のように売上を管理する仕組みです。実際にそれが直接給与に繋がらないのですが、成果給を出したり、賞与がでたりなどします。稲盛和夫氏が編み出したアメーバ経営を、弊社の規模に落とし込んだ考え方です。

リソースの社内売買が行われるので、誰に売上がたつのか明確になります。
100万円のweb制作プロジェクトがあったとするならば、営業がディレクターに75%で社内発注します。それをデザイナーとエンジニアに25%ずつで発注します。営業、ディレクター、デザイナー、エンジニアにそれぞれ25万円の売上がたちます。
だいたいweb制作プロジェクトは2〜3ヶ月はかかりますので、平すとその案件は月10万円前後の売上にしかなりません。プロジェクトによっては金額や制作期間は全然違うので、いろいろなプロジェクトにパラレルにアサインされながら個人の売上を管理していきます。

と、まあこの制度を説明すると長くなってしまうので『マイクロ経営』がもたらした経営的なメリットなどもいつかブログでも書こうと思います。

今のところ数字意識を確実に持つ制度であることには間違いないと思っています。

経営者や営業だけが売上を管理しているようでは、プロジェクトはうまくいかない

『マイクロ経営』を導入して、社内デザイナーの数字意識がどう変わったのかまとめてみます。

①仕事の質を見直すきっかけになった

売上として結果が見えるので、何が足りないのか、ミッションは何かを考えるきっかけが生まれました。たとえば売上が足りなかったときに、「デザインの品質が足りない」と気付ける。商藝舎としてお客様に出せる品質にいれば、どんどんディレクターから仕事を振られ、またスピードやコストを意識して動けるので、売上があがっていく。でもそれが足りないから、売上がいかないのではないか、と。

②お客様のビジネス理解に興味を持てる

これは自分の仕事の視野の広がり方において、大きな影響だったと思っています。
マイクロ経営を行うことで数字に対して真剣になれるので、お客様の目的やビジネス理解により興味を持てるようになります。デザイン性だけではないコミュニケーションを取れるようになったデザイナーが増えました。

③納期意識が高まる

これもマイクロ経営を導入して圧倒的に変わったことだと思います。
やはりweb制作では公開日が絶対決まっているわけではないので、スケジュールを引き、それに可能な限り沿って進行することが求められます。長期化し公開日が何度もずれる、ということがありましたが、かなり少なくなったと思います。

④スコープをしっかり把握するようになる

プロジェクトを受注した際に、スケジュール、予算、スコープはしっかりとお客様と擦り合わせます。ディレクターはもちろんですがデザイナーもその目線を持つことで、予算&スコープの範囲での最大化を追求できるようになります。
例えば、お客様から明らかなスコープ外となる要望が発生した際に、社内でどうその要望を汲み取り、スコープ内におさめる提案につなげるかという建設的な会話ができます。

⑤なによりも事業作りに興味を持ってもらえた

プロジェクト目線も非常に大事ですが、やはり組織・チームで運営しているこの環境に興味を持って欲しいと思っています。プロジェクトだけが会社の仕事ではない。事業をつくり、人を育つ環境にし、組織を拡大していく目線があると、その考え方がプロジェクトにも広がっていくのではないかと思っています。

以上、「数字を知って」仕事をすることの大切さを書きました。

2015年の創業時から続いている社訓のひとつに、他責にせずまず「自分ごと化」しようという文化があります。「何か問題が起きた時に、自分ごととして捉え何をすべきかを考えよう。」とみんなが思うことで、次の打ち手を打てるかどうかが変わってきます。これまでのことを振り返っていて、その文化はやはり大事なのではないかなと改めて感じました。

長々と書きましたが、結論は『数字を知ることがよりよいクリエイティブを行うようになる』のではないかと思っています。
クリエイティブの手段として数字を知る。組織やクライアントのため、自分のなすべきことがわかるはずです。

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